ぱーと1
2007年6月16日、県立奄美図書館にて行われました「あまみならでは学舎 西 和美の島唄講座」のテキストです。
WEB用に、元のテキストの一部を改変してあります。
あがる日ぬ春加那節
シマウタの中でその文句の解釈がもっとも難しい唄の一つです。
ノロ神様たちの儀式のあと、神様に捧げた御神酒やご馳走を神様と一緒に食べたり飲んだりする、直来(なおらい)の席でよく歌われた唄で、神様の世界をさす「てるこから下りて」とか「どこの村の稲の神様か」などという神々しい文句が歌い込まれています。「テルコ、ナルコ」の神様の世界から人間世界へ稲種を持ってやってくる、という神話が唄になっています。
「あがる」は「あがれ」で、奄美では方位の「東」のことであり、日が昇る東の方向に対する日本人や奄美人の古来からの聖なる場です。ですから曲名も「東の世の春加那」で、「東(あがれ)世(ゆ)ぬ春加那」とでもしたらどうだろうか、などと考えたりもします。
もともとは、女性たちだけの場で、チヂンだけの伴奏で歌われていたものです。三日(みきゃ)戻りの文句も歌われますが、奄美ではもうこのお祝いのことはあまり聞きませんが、沖縄県の久米島では今でも盛大にやっているそうです。昔、テルコから戦争をしに、ヒャンザに男ばかりが来たそうです。そうしたら、ヒャンザの男はみんな山に逃げて、女ばかりが残ったそうです。そのうちアガルイのハルカナという女とクマヨシという男の二人がいい仲になっていたそうです。それを友達にも隠しておいて、三日目に打ち明けてお祝いをしたそうです。それが三日戻りの始まりだそうです。ヒャンザとは、沖縄や唐よりもずっとずっと遠いところです。
よく唄われる歌詞です
上がろ日ぬ 春加那やぁ
だーぬ村の 稲加那し志
うま見ちゃむぃ 菊女加那ー
てぃるこ くぅまゆぅーし
てるこから 降りぃてぃよ
はれてぃよ 行きゃなりゅきゅ
三日戻り 四日戻り
しゅんちゅ人どぅ 戻てぃ愛しゃ
また愛しゃ
三日戻り 四日戻り
しゅんちゅ人どぅ 見欲しゃ愛しゃ朝花節
挨拶の唄とか、声ならしの唄、などといわれて、唄のでる場では必ずといっていいほど最初に歌われます。
でも本当はこの一曲で、挨拶の歌、恋の歌、別れの歌といろいろな歌詞が歌われ、この唄だけでも一晩の唄遊びができる、島を代表するといってもいいぐらいの唄です。
掛け合い唄で唄われるうえ、歌詞の数は1,000を超すともいわれています。
お店では、「ようこそいらっしゃいました」という歌詞で唄いはじめますが、それでもなん種類もあって、西 和美は、その日の気分で唄い分けています。よく唄われる歌詞です。大意は、
めずらしくも(稀れ稀れ:まれまれ)お会いできました。
これこそ神様のお引き合わせです。
ハーレイ 稀れ稀れ汝きゃ拝がでぃ
ハーレイ 神の引き合わせに
稀れ稀れ汝きゃ拝がでぃ
→ かずみのしま唄解説 ぱーと2もお楽しみください。
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